すまい相談

近藤典子先生の「すまい相談室」

6月のご相談・ご質問

いつもこのコーナーを楽しみにしています。現在、妻と2人暮らしですが、このたび私の母と同居することになりました。マンションは4LDKなので、トイレに近い部屋を母の個室にしようと思っています。高齢者の部屋で気をつける家具の配置や収納があります? ちなみに母は87歳ですが今のところ健康です。

(ニックネーム:リョウタロウ)

"リョウタロウ"さん、ご相談ありがとうございます。
回答してくださるのは、住まい方アドバイザーの近藤典子さんです。
早速お願いします。

こんにちは、近藤典子です。

いつも読んでくださっているとのこと、ありがとうございます。ご相談者のリョウタロウさんは、お母さん想いのとっても優しい方のようですね。トイレの近くに個室を用意したい、それもすごくいいと思います。同居に備えてリフォームされるということであればいろいろ方法がありますが、ここではリフォームなしでできることを提案しましょう。

ご質問には「家具の配置や収納」と書いてありますが、その前に、もっと大事なことは部屋そのものなんです。高齢者のための空間って何? どこに気をつければいいの? ということをまず考えてみましょう。70歳代、80歳代、見た目はまだまだお元気でも、本人が思う以上に身体的にも感覚的にも高齢化が進んでいるものなのです。ご本人は意外と若いと思っている方が転んで初めて、えっ!? と身体の衰えに気づいたりね。ですから、高齢者にはハンディがあるということを前提にした空間づくりが必要です。

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つまずきやすい段差はありませんか?

ご相談者はトイレについては配慮されていますが、お風呂は大丈夫ですか?

段差には、階段のような「単純段差」と、高くなっているところ(構造上の床の高低差)をまたぐ「またぎ段差」があります。

ユニットバスの場合、洗面所と浴室に100mm前後のまたぎ段差がある場合があります。またぐ、という行為が高齢者には意外とたいへんなんですね。ですから、この段差を50mm以下にすると、うんとラクに安全になります。リフォームしなくても「すのこ」を使えば簡単。樹脂製や木製のものなどいろいろ市販されていますよ。

浴室のほかにも、電気コードやカーペットといった、わずか1㎝ほどの段差もつまずきの原因に。若い時には想像も及ばないでしょう? 電気コードはモールを使って壁面に固定し、カーペットは外すことをおすすめします。

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必要なところに「手すり」はありますか?

高齢になると足腰が弱くなるので、無意識に周囲につかまりながら歩くようになります。室内であれば家具や椅子に、立ち上がるためにつかまったり、歩行するために伝ったりします。このとき家具がキャスター付きだったり、開き戸だったりするとどうでしょう? 通常であれば使いやすいこうした家具も、高齢者にとっては不安定で転倒の原因にもなりかねません。

例えば開き戸の洋服ダンスの場合、トビラを外してもよいのではないでしょうか。安全面からだけでなく、収納の面からも「見える化」しておくことは高齢者の生活空間において大事なことだと思います。

リョウタロウさん! 「家具を配置する」という考えが若い方の目線だということに気づいてもらえましたか? お母様がどこに座って、どのように立ち上がって、どこを伝って移動するかという動線の中に家具も含まれる。家具も手すりのひとつになる(可能性がある)ことを意識しましょう。実際にお母様に動いていただきながら配置を決めていくのがいいですね。将来的に車椅子が必要になれば、家具そのものがじゃまになることもあります。造り付けの造作家具より、組み立て式のシステム家具や家具屋さんの置き家具などの方がレイアウトが変更しやすいと思います。

廊下や階段などには、高齢者用の手すりを付けましょう。壁に下地材が入っている場合は簡単に取り付けることができますが、下地材が入っていない場合は、専門業者に任せるようにします(下地材が入っているかどうかは、壁を叩いたり下地探しの道具を使うと分かります)。

高齢者用の手すりについてはコラムをどうぞ!

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照明や色彩は高齢者にとって安全ですか?

加齢とともに、光を感じる力も衰えてくるということも必ず意識してください。20代に比べ60代では3〜3.5倍の明るさが必要とも言われています。ですから、お母様の居室やリビングなどは全体照明に部分照明をプラスしたり、足元灯を廊下だけでなく居室にもつけるといいですね。ただ、水晶体の衰えから「まぶしさ」を感じやすくなるのも高齢者の特徴。光源が目に入らないように、照明器具は必ずカバー付きを選びます。

「色」や「素材」にも工夫が必要です。高齢者に多い白内障は、よく似た色や、違う色でもトーンが同じような色は区別がつきにくいとされています。白地にパステル系の組み合わせなんて、見えにくいことこの上なし! ですから、特に安全を確保したい場所は、はっきりした色使いの方がいいのです。床材が茶色であれば、家具や手すりはまったく違う色に。テーブルと椅子の色を変えたり、スイッチやコンセントに色付きのカバーや素材の違うカバーを付けるなどして、高齢者が注意を払いやすくする工夫をしましょう。

ここで、ちょっと近藤流
「"高齢者用の手すり"は3つのポイントを押さえて」

部屋の中や廊下の要所要所に手すりがあると便利で安心です。高齢者用の手すりを付けるときに気をつけたいポイントは3つ。

Column

握力がなくなる高齢者には、太いバーはダメ

手すりは太いほうがいいと思われがちですが、高齢になると握力がなくなり太めのものはしっかりつかめないので、実は細いほうがいいんです。バーの直径は30〜35mm前後のものが目安ですが、握りやすさには個人差があるので、実際に握ってもらって決めるようにします。

高齢者が2人以上いる場合は、握力のない人に合わせるようにしましょう。

高齢者本人がいちばんラクな高さ <平均750mm>に設置

手すりの高さは、体型や身長に合わせていちばん本人がラクだと思える高さに設置します。750mmが平均ですが、上下100mm程度のゆとりをもたせて下地補強をしておくといいでしょう。本人がラクだと思える高さって、加齢とともに変わることもありますから。

手すりはできるだけ長くつけよう

手すりがところどころ途切れていると、切れ目に服などを引っかけて転倒する原因になります。手すりはできるだけ長く設置するのがポイント。 

資料提供:株式会社近藤典子Home & Life研修所

同居されるお母様には、息子として心配ごとがいろいろあると思います。でもね、だからといって家中にやたらめったら手すりを付けられたら、どうかしら? 「あら、年寄り扱いされちゃったわ」と思わないとも限りませんね。まずはお母様と一緒に家の中を歩いてみて、どうしたいのか耳を傾けて、その上で手すりを付けるなどするとお互いに安心です。

私が主人の母と暮らしていたとき、家の中はバリアフリーにはしませんでした。だって、外の世界はバリアフリーじゃないから。家の中は屋外の練習。お風呂だけはこわいからバリアフリーにしましたが、その他は段差もそのまま。母には家の中でも3点杖を使いながら歩行してもらい、手すりは必要最低限にしました。

そうそう、高齢者には布団よりもベッドの方が断然おすすめ。日中は普通のベッドの高さにしておいて、寝る時には高さを下げられるベッドも登場しています。ベッドには柵もつけましょう。

リョウタロウさんも優しい心はそのままに、過保護でない高齢者の住まいづくりを実践されてはどうでしょう。

住まいの「悩み」は、快適な住まいへの糸口です。
一緒に解決のトビラを開きましょう!

近藤典子 Noriko kondo
(住まい方アドバイザー)

30年に及ぶ収納実績による商品開発・オリジナル収納ユニット・間取り提案が好評。 著書は、累計部数400万部以上、海外でも翻訳多数。 2016年より南京工業大学浦江学院 客員教授。 資格取得できる「住まい方アドバイザー養成講座」を東京・大阪にて開講。第3期(2017年6月開講)受講生申込受付中。お問い合わせは、近藤典子の暮らしアカデミー事務局(http://www.kurashi-academy.jp TEL:03-3267-0537)まで。

●近藤典子Home&Life研究所 http://www.hli.jp/

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