ゼミナール

「住めば都」ゼミナール

元気なまち物語 ④ 茨城県・結城市

結城紬のアンテナショップ「結城 澤屋」店長 籔谷智恵さんに聞きました

「結城紬の新しい魅力をみせる店と
商品づくりに挑戦中です」

2年前、結城紬の産地問屋「奥順(おくじゅん)」
がつくった新しいかたちのアンテナショップ。
その店長に抜擢された籔谷智恵さんに、
結城紬への思いとショップづくりについて聞きました。

Q.神奈川出身で、大学卒業後に結城紬の会社に就職されたとか?

A. 8年前に就職活動をしていた時に、幼なじみに「あなたにぴったりの会社がある」と紹介されて結城紬の産地問屋である「奥順」を知りました。その幼なじみと2人で受けたら2人とも採用されて(笑)

入社してから6年間は、主に会社の広報と展示会の企画をしていました。きもののことや結城紬のことについてはまったく知らなかったので、入社後に勉強したんです。茶道も会社が習わせてくれました。こうした和のたしなみが、ショップを運営するうえで、今すごく役に立っています。

古い佇まいだが、店の中は新しい感性の商品と若いスタッフのやる気で満ちている。

見世蔵を生かしてつくったショップ。自社商品だけでなく他産地や工房へ別注するオリジナル品も揃えてクオリティを保つ。

Q.アンテナショップを開くことになったいきさつは?

A. 入社後しばらくして「消費者の方に直接販売するアンテナショップを開けたらいいな」と思うようになりました。問屋として小売りの現場から学べることがたくさんあるだろうし、「こういうショップにすれば、お客さまに喜んでいただける」という構想やイメージも自分の中にありました。それで思い切って社内プレゼンしてみたんです。店や商品についてだけでなく、店を運営するメンバー構成まで提案したらOKをもらえて、会社が所有していた見世蔵を使ってショップをつくれることになったんです。それが2年前ですね。

ショップの名前「澤屋」は母体の紬問屋がかつて使っていた屋号。潤沢で淀みない水の流れにも因んで名付けた。

店が発行するニュースレター。籔谷さんが入社後6年間していた広報の仕事で培ったノウハウが生かされている。

Q.会社はなぜ籔谷さんの提案を支持してくれたのでしょう?

かつてきもの業界では問屋が小売店を経営することはタブーとされていたが、今ではそうした風潮もなくなりつつあり、澤屋は業界からも温かく見守られている。

A. 明確に「こういうお店がほしい」というイメージが描けたことが大きいと思います。アンテナショップが必要という認識は以前から社内にありました。きものの市場自体が小さくなる中では、産地が情報を発信して小売りの道を模索する必要があります。ただ「産地を守る」という使命感が先立つと、それが社会にとって必要なものなのかって分からないと思うんです。そうではなくて、「こんなきもののお店があったら一人の消費者として買いに行きたい、それが結城紬を核とすれば適う」という順番で考えられたことが、課題だったアンテナショップをかたちにできた要因だと思います。また業界的にも、以前は問屋が小売りをするのは摩擦が大きかったようですが、今は「きものファンを増やすべく一緒に頑張ろう」という雰囲気になってきています。もちろん会社(奥順)としても、澤屋で小売りするものは澤屋オリジナル商品として、奥順が卸す商品とは分けて作り、きちんとブランディングをしています。

Q.ショップをオープンしてどんな気付きがありましたか?

A. 結城紬やきものにはまだまだ可能性があるな、と思いました。特に驚いたのが、「結婚」にまつわる需要があることです。たとえば、婚約者にエンゲージリングではなく結城紬を贈りたいという男性や、結婚記念日に感謝を込めて奥さんにプレゼントしたいという方、貸衣装ではなく自分の結城紬で結婚式を挙げたいという女性もいらっしゃいました。こうしたお客さまは、結城紬のもつ物語性と価値を評価して、人生のイベントとそれに続く日常を彩る衣として結城紬を選ばれます。そこに結城紬の新しいプレゼンテーションの切り口があることを強く感じますし、その市場に適した商品づくりや提案の仕方を研究しないといけないなとも思います。こんな風に、一般的には衰退が言われるきものにもまだまだ可能性があると気づけたのは、やはりこのショップの力が大きいですね。

澤屋には100色の中から好きな色を選んで糸染めをし、織りあげてもらうオーダーシステムがある。きもの好きにはたまらない究極の贅沢。

となりまちの作家さんに店のイメージに合わせた色糸で作ってもらっている指抜き。店頭に置く商品には小さな物にも心を込める。

Q.これからの目標は?

A. もっともっと「澤屋」らしさをつくり出していくことです。それは商品や店のディスプレーや展示会の企画のこともあるし、先ほどお話した結婚需要などの切り口のこともあるし、他の産地や和装アイテムとのコラボレーションのこともあります。さらに言うなら、私も含めて昨年結婚ラッシュだった店の女性スタッフが、出産してからも「澤屋」で働き続けるための労働厚生システムも含まれます。これらがひとつになって「『結城 澤屋』って素敵だね。かっこいいね」と言われる店にしたいですね。そしてそれが結城紬に対する見方や評価を変える要因のひとつになってくれたら、すごく嬉しいです。

織機で織った桜色の結城紬にさらに型染めを施した澤屋オリジナルの結城紬。洒落たテーストと買いやすい価格が魅力の新機軸商品だ。

結城 澤屋

〒307-0001 結城市結城12-2 TEL 0296-33-7047 12時~17時(平日)・10時~17時(土・日・祝)/火曜休
http://www.yukisawaya.com

取材:2016年3月
撮影:銭場千夏(株式会社フレンズ)

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