ゼミナール

「住めば都」ゼミナール

元気なまち物語 ② 岡山県真庭市

「里山資本主義」の舞台・真庭

身近にあった宝物が
「このまちで暮らす幸せ」を運んでくれた。

2015年10月30日更新

真庭市は2005年、9つの町村合併により生まれた。市役所本庁の玄関には、そのことを表す9組のヒノキの組柱で作られたモニュメント「真庭回廊」が建造されている。

その土地に眠る休眠資産を掘り起こすことで
地域経済とコミュニティーの再生をはかる「里山資本主義」
今回訪ねたのは、その舞台となった岡山県真庭市です。
山に囲まれたこのまちの宝は、山林と人でした。
さてどんな物語と出会えるのでしょうか。
早速、探訪を始めてみましょう。

それは住む人たちの思いから始まりました。

周囲をぐるりと山に囲まれた人口5万人ほどの真庭市。かつてこの静かなまちには深刻な問題がありました。それは高速道路ができたことによるお金と人の都市への流出、そして地場産業である林業の衰退です。
それに対して「このままではいけない。何とかしなくては」と声をあげたのが地元の若手リーダーたちです。彼らは1993年に「21世紀の真庭塾」というグループを立ち上げて、さまざまな分野の専門家や識者を呼んで勉強会や意見交換会を開き始めました。
その結果、リーダーたちは大きく2つの再生方法を選択します。ひとつは「足元にある資源を生かした産業によって、地元で幸せに暮らせる循環型社会をつくりだすこと」、そしてもうひとつは「真庭の町並みや景観を保存し、生かしながら、まちや人を活性化すること」でした。そう、リーダーたちが選んだのはまさに20年後に「里山資本主義」と呼ばれて注目されることになる、自助と自立をモットーとする地方再生の方法だったのです。

真庭地域から産出される良質なヒノキは「美作桧(みまさかひのき)」と呼ばれて人気が高く、長年人々の暮らしを潤してきた。まさに宝の山だが、近年は需要が減り、手入れの必要な山林を持て余すケースも増えている。

真庭は周囲を山に囲まれた典型的な中山間地域で、主要産業は林業・木材業。

森林を資源にした「バイオマス産業杜市(とし)」構想が誕生。

足元の資源を見直すことから始まった真庭のまちおこし。まず注目されたのは、真庭地域から年間7万8千トンも出る製材屑や廃材でした。「これまでは木質のゴミとしてお金を出して捨てていたこれらの資源を有効利用することで、古くからの地場産業である林業・木材産業の周辺に新しい産業を生み出せるのではないか」とまちの人は考えたのです。
新しい産業ができれば、新しい雇用が生まれて人口流出が止まり、Iターン者やUターン者も増えるかもしれません。そうすれば高齢化が進んでさびれていた地域コミュニティーも活発になることでしょう。このように描かれた真庭の地域再生のストーリーが「木質資源活用産業クラスター構想」、すなわち「バイオマス産業杜市(とし)構想」なのです。

真庭市役所にある「エネルギー棟」。
市役所で使う冷暖房用のエネルギーには木質チップとペレットを使用している。

まちには3つの木材市場、30社の製材所、1つの製品市場があり、森林資源から製品までを地域内でまかなえる。

バイオマスタウン構想のフローチャート図。年間約7万8千トン発生している「木のゴミ」を有効利用して新しい産業連携をおこし、まちと人を活性化しようとする構想。

発電から多彩な分野へ。そして市民の誇りへ。

人工林で発生する間伐材や未利用木材を活用した産業や製品の可能性は、どんどん広がっている。

真庭市のバイオマスタウンへのアプローチは、まず発電から始まりました。製材屑や廃材からチップやペレットを作り、それを燃やして発電した電力を工場や事務所で使うのです。
このバイオマス発電は、最初は民間企業が自家消費する電力を賄うためのものでしたが、真庭市はいろいろな企業や団体とタイアップして、2015年4月についに本格的な発電所を稼働させて、電力を売る売電事業にも乗り出しました。バイオマス発電の本格的な産業化に挑戦し始めたのです。
さらに木片コンクリートや木粉プラスチックなど新素材の開発や、木屑を利用した堆肥づくり、また、ヒノキのチップやおが屑を使った殺菌効果の高いネコ砂など、エネルギー以外の分野にもバイオマス産業を広げていく試みも始まっています。

そして、何より素晴らしいのは、こうした取り組みによって他に先駆ける「バイオマス産業杜市(とし)」の住民となったことを、多くの市民が誇りに感じているということです。

勝山地区では、約90軒の家々がすべて違ったオリジナルのれんを掛けて景観づくりをしている。 住む人も訪れる人も共に楽しめるまちおこしのアイデア。

では次に、真庭を元気にしている人たちを訪ねて、詳しいお話を聞いてみましょう。

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