まりも図書館

12月の2冊

葉っぱで見わけ 五感で楽しむ 樹木図鑑」
監修/林 将之 編著/ネイチャー・プロ編集室

「日曜日の住居学 住まいのことを考えてみよう
宮脇 檀

2016年12月1日更新

葉っぱで見わけ 五感で楽しむ 樹木図鑑」

監修/林 将之 編著/ネイチャー・プロ編集室

普段、なんの樹木だろうと思いながら、わざわざ枝の葉を取って調べたりはしないものの、落ち葉を手に取ると不思議なものでその葉の住処だった樹木の名前が知りたくなる。人でも生物でも好きになると名前が知りたくなるのは人情かもしれない。

そんな樹木と葉っぱの初心者にもお薦めなのが、この樹木図鑑である。片手に図鑑を持って、片手で葉っぱを照らし合わせられる版の大きさがいい。さらに、開くとほぼ原寸大と思われる葉っぱが、実にリアルに現れる。(よく見ると、原寸大、70%、30%とすべてに表記がある)。リアルなのもそのはず、監修者であり樹木図鑑作家の林 将之さんが独自に確立された、葉をスキャナで直接取り込む"葉っぱスキャン画像"だから。

早速、通勤路で拾ってきた葉っぱを調べてみた。たぶんケヤキ並木だろうと思いながら実は自信がなかった司書まり子だが、ケヤキのページを開いて並べてみると、間違いなし! (写真では枯葉の下に隠れてしまったが、葉っぱの裏も載っている)。葉はざらつく、鋸葉は曲線的な波形、葉柄は1㎝以下で短い、などチェックポイントのほかに、よく似た葉っぱ、例えばケヤキならばムクノキとの見わけ方も説明されているのが嬉しい。

もう一つこの図鑑の特長は、タイトルにもあるように"五感で楽しむ"仕掛け。随所に、見てみよう、触ってみよう、食べてみよう、かいでみよう、聴いてみよう、といった五感コラムがある。例えばソヨゴのコラムには、「風の強い日に、ソヨゴの葉の音を聴いてみよう」、チョウ類の食草であるカラスザンショウのコラムには「この香りは悪臭と感じる人もいれば、良い香りだと感じる人もいて個人差がある。香りをかいで、確認してみよう」といった具合。また、"つながっている生き物"というコラムには、鳥、動物、昆虫、魚まで登場する。

知識を得るためというより、樹木や葉っぱとより親しむために使いたい1冊。ペラペラめくりながら気づいたが、図鑑によくある整然としたレイアウトとはおよそかけ離れた自由で伸びやかなページ作り。眺めているだけでも楽しくなる。別冊で付録の樹木観察ノートは、散策や山歩きの友になりそう。

はやし・まさゆき
1976年山口県生まれ。樹木図鑑作家、編集デザイナー。千葉大学園芸学部卒業。『葉で見わける樹木』(小学館)、など著書多数。

ネイチャー・プロ編集室
生物・自然科学専門の企画・編集集団。

ナツメ社 本体1,380円+税

「日曜日の住居学 住まいのことを考えてみよう

宮脇 檀 著

建築家で名エッセイストとして知られた宮脇 檀氏が1998年に亡くなってから18年。いまなお『宮脇檀の住宅』『男と女の家』などの著書は、建築家を目指す人だけでなく、住まいについての"教養書"として広く読み継がれている。一般読者向けに1983年に発行された『日曜日の住居学 リビング・ルームって何だろう』も、2013年にサブタイトルが「住まいのことを考えてみよう」と変わり、カバーも新装されて文庫版として登場した。

マリモリビングを住むことのハウツーを教えたり、情報を提供したりするだけのウェブ大学にはしたくない、というのが我がフクロウ学長の考えだが、宮脇氏も住宅雑誌のレベルについてこう苦言している。「住は、まず第一に現在の住宅雑誌のレベルから抜けださなくてはならない。(略)そして、一般誌の中にロッキードや憲法問題や麻雀や映画情報並みに住の問題が取り扱われるようにならなければならない」と。そしてある日、「国電の中でフト隣の人の読んでいる文庫本が森村誠一ではなくして住居に関する教養の本であったというときが来なければならない。」

ちょうど今回の「こう住む、ああ住む」ゼミナールが、東向きと西向きの対決だったこともあり(http://www.marimoliving.jp/sumu/taiketu/06/index.html)、第3章の「私の建築日誌」内に収められた"なぜ南向きの部屋?"は興味深かった。
太陽を求めて夏に一斉に南へバカンスに出かけるヨーロッパ人が、こと住まいとなると、「まったく南を無視して、東向き、西向き、北向きと自由自在」。それに対して日本の住宅、ことに戦後の住宅は大方が南に面して主要室をとっているという。陽が入る部屋がいいことは百も承知の上で著者は、緑を育ててくれる朝日だけが差しこむ東向きの部屋、北に開いた庭を愛でる部屋、西日と一緒に風の吹きこんでくる部屋の気持ちよさ、さらには明かりがほとんど入らない薄暗い部屋の落ち着きや、トップライトの光だけのドラマチック空間にまで言及。
「太陽にベタベタへばりついて生きていくことしか知らないという生き方は、まるで乳離れできない幼児のような感じがする」と手厳しい。そう言われてみれば、何も本当に部屋の隅々までくまなく太陽の光が届く必要はないことに気づかされる。

また、多くの施主の家を訪れて一番驚くのが"汚さ"だと語る著者。うっすらとほこりのにおいがする、と。家ができたらちゃんとしようと思っている‥‥などというけれど、いくらプロの手で新しい家を手にいれたとしても、こんな汚い住み方を是認しているあなたにちゃんとした住み方ができるのですか、と問う。
「どんな条件下にあろうと、その状況の中で自分の生活空間を充実させる努力をする人でない限り、新しい生活空間を自分のものにする資格はない」という言葉が、司書まり子の心にもずしんと響いた。

第1章のタイトル、「住まい方は生き方」からも分かるように、住まいのハード面よりもむしろソフト面にスポットを当てたエッセイ集なので、すでに家を建てたり買ったりした人でも、賃貸で住み替え続けている人でも、自分の住まい方を見直すヒントが見つかると思う。

みやわき・まゆみ
1936年、名古屋生まれ。建築家、エッセイスト。東京藝術大学建築科卒業、東京大学大学院修士課程終了。1998年逝去。

河出文庫・本体660円(税別)

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