まりも図書館

10月の2冊

「はちうえは ぼくにまかせて」
作/ジーン・ジオン 絵/マーガレット・ブロイ・グレアム 訳/もり ひさし

「ポール・スミザーの剪定読本」 ポール・スミザー 著

2016年10月3日更新

「はちうえは ぼくにまかせて」

作/ジーン・ジオン 絵/マーガレット・ブロイ・グレアム 訳/もり ひさし

緑色の大きな本に顔を埋めるように何やら夢中で調べている風の男の子。本の表紙には「げんきなはちうえ よいしょくぶつ」と書いてある。彼の周囲には鉢植えの植物がぐるりと。子どもにも大人にも人気の名作絵本『はちうえは ぼくにまかせて』を思い出させてくれたのは、9月の「五感インテリアゼミナール」で紹介された「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」の緑色の"薬草小屋"だった。
http://marimoliving.jp/gokan/kaori/05/index.html

主人公のトミーは、ドアノブに手が届くか届かないかという幼い男の子。植物の世話が上手という得意技をいかして、夏休みに旅行する人の鉢植えを預かることに。「植木鉢、1個で1日2セントだよ」(ちなみに本が書かれたのは1959年)。ちゃんとしたアルバイトなのだ。ご近所の人はみんな彼のお客さん。手押し車で次から次へと鉢植えを預かりに行き、トミーの家はリビング、ダイニング、階段まで大小さまざまな鉢植えであふれる。びっくりするお母さん。仕事から帰ってくるなり植木鉢につまずいて目を吊り上げるお父さん。

そんな3人の家族と2匹(犬と猫)、そして数々の鉢植えが、マーガレット・ブロイ・グレアムの柔らかな鉛筆のラインと色数を抑えた彩色で、静かにしかしいきいきと描かれている。ポトス、モンステラ、サンスベリア‥‥植物好きなら一つひとつ言い当てられそう。葉っぱの形や枝ぶりに合わせた植木鉢もチャーミングで見ていて飽きない。そもそも「休暇中に鉢植えの世話をどうするか」という長年の悩みをもとに創作されたというだけに、作者夫妻の植物への愛情が伝わってくる。

さてトミーくんのお家。2週間も過ぎると鉢植えの植物はどんどん伸びて家中に生い茂る。ジャングルの中で食事をし、草をかき分けてテレビを観、森の中の小さな湖で泳いでいる気分で湯船に浸かる。その生活が楽しくて仕方ないトミーくんと、まんざらでもなさそうなお母さん、相変わらず目を吊り上げるお父さん。
そんなある夜、大きくなった植物で家が壊れてしまう夢を見たトミーくん。図書館へ走り片端から植物の本を読んで、伸びすぎたところをハサミで刈り込む"剪定"を始める。さらに切り落とした枝は小さな鉢に植え替えて、後日近所の子どもたちにあげるのだ。司書まり子はこのページでいつも胸が熱くなる。なんという懸命さ!

当キャンパスで「タニク観察日誌」を担当しているなかむら助手も本書のファンだという。育てている多肉植物が枯れてくじけそうになった時、トミーくんの健気さに教えられるのだと。"手入れ"の本質をさりげなく教えてくれる1冊。

作/ジーン・ジオン(Gene Zion)
1913年ニューヨーク生まれ。本の編集者、広告デザイナーを経てフリーのライターに。1948年マーガレット・ブロイ・グレアムと結婚後、妻と共同制作の絵本を数多く出版。日本では『どろんこハリー』などが紹介されている。1975年死去。

絵/マーガレット・ブロイ・グレアム(Margaret Bloy Graham)
1920年トロント生まれ。トロント大学で美術史を学んだのちニューヨークでファッション雑誌のイラストを描く。夫との共同制作の他にベンジーシリーズ。2015年死去。

訳/もり ひさし(森比左志)
1917年神奈川県生まれ。教師生活を経て絵本作家に。翻訳に『はらぺこあおむし』『パパ。お月さまとって!』など。

ペンギン社・定価1296円(本体1200円)

「ポール・スミザーの剪定読本」

When, why and how to prune?

ポール・スミザー 著

切るべきか、切らざるべきか。庭や鉢植えで樹木を育てている人なら、必ずこの問題に突き当たるのではないだろうか。剪定のハウツー本はたくさん出版されているけれど、イラスト仕立てで読み物風の『ポール・スミザーの剪定読本』は一味違う。

著者のポール・スミザーさんはイギリス人の園芸家で、現在は八ヶ岳南麓を拠点にランドスケープデザインや、農薬や化学肥料を一切使わない庭づくりの指導などを行っている方。イギリスの王立園芸協会で学んでいた時に日本の草木のとりこになり、19歳で来日。以来27年にわたり「日本の植生に合った庭づくり」を提唱、実践されている。
本書は、そのポール・スミザーさんの「でたらめに切られる日本の木。これじゃあ、あまりにかわいそう‥‥。日本の木をなんとかしたい!」という長年の念願が、1冊に凝縮されている点で"一味違う"。

物語は、自宅の庭をイングリッシュガーデン風にと猛進する主婦の根元キリコさんと、妻の指示に従ってやみくもに庭木を剪定する根元良夫さんを中心に、カエルやダンゴムシ、ヤマネなど自然界の仲間たちが根元家の庭づくりに"ちょっかいを出しつつ"剪定方法を伝授していくという仕立て。ポールさん自身が冬の間に描きためたというイラストと、登場人物たちの語り口が愉快だ。

伝授の中身は、モクレン、サツキなどを例に自然の樹形をつくる剪定方法をはじめ、「生け垣づくりの挑戦」「つる植物でアーチやパーゴラをつくる誘引方法」、「大きな葉っぱを楽しむための強剪定(コピシング)」、「シンボルツリーの考え方と育て方」など。上の写真は、スモークツリーのコピシングに根元良夫さんが挑戦するページ。「良夫さん、ここまで切っていいんですよ。」のキャッチコピー通り、知らないと、本当に大丈夫? と不安になるほどの大胆な剪定法。でも、強剪定した後は切る前と見違えるような美しい大きな葉っぱになるという。

さらに本書では、How to SENTEIの他に、ポールさんと4人の樹木・里山のプロたちとの対談があり、剪定の奥深さと面白さに触れることができる。 ツリークライマーの安藤義樹さんとの対談では「ヨーロッパやオーストラリアじゃ、役人も木のプロなんだよ。実に樹木のことをよく知っている」、ナチュラリストで植物探検家の荻巣樹徳さんからは「日本人は時間の経過を無視するんだよね。庭の竣工時にきれいじゃないといけない。5年後、10年後を見ない」など、海外で活動するプロから見た日本の剪定の問題点も指摘されている。

そして巻末にはポールさんからのメッセージ。「健やかな庭を、みんなでつくっていけば、緑の回廊があちこちでつながっていく。ポール・スミザーの剪定読本、参考になるとうれしいです」。自分で庭やベランダの樹木を剪定したい人だけでなく、街路樹や近所の公園の樹木が気になるという方にもおすすめしたい。

ポール・スミザー
ランドスケープデザイナー、園芸家。1970年イギリス生まれ。1997年東京都三鷹市で有限会社ガーデンルームスを設立。2009年より八ヶ岳南麓に在住。公開中のガーデンに、萌木の村ナチュラルガーデン(山梨県)、ピクチャレスクガーデン(長野県)など。著書は『ポール・スミザーの自然流庭づくり』ほか多数。

講談社・本体1800円(税別)

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