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1月の1冊

「野尻抱影 星は周る」 野尻抱影

2016年1月29日更新

「野尻抱影 星は周る」

STANDARD BOOKS 野尻抱影 著

マリモリビングでもついに公式ツイッターが始まった。星や月や暦についての呟きが多いのは、ふくろう学長のお好み? あるいはマリモのマンション「ポレスター(北極星)」の導き? 司書まり子が長年愛用している手帳、『天文手帳』(地人書館)を求めに書店へ行ったとき、同じ棚に並ぶ野尻抱影の名と装丁の美しさに一目惚れしたのが本書。空気が澄み、シリウスを初めとする一等星が7つ以上もきらめく1月、2月に手に取ってほしい一冊。

星は周(めぐ)る

星は夜と共に周り、年と共に周る。恐らく、星に親しんでいる人達ほど季節の推移をはっきりと実感し得る者はあるまい。十月の或る夜、プレヤデス星団が地平の濛気(もうき)にぼかされながらペルセウス座のはずれに懸っているのを発見すると、「ああ、もう一年が廻った!」と呟く。但しこの呟きは—————

さて、その野尻抱影(1885〜1977)は「星の文人」と呼ばれた英文学者。3部からなる随筆は、どれも2ページから10ページに満たない短いもので、書かれた年代も順不同なので、好きなところから読むことにする。

まずは副題にもなっている「星は周る」。ここでは筆者とオリオンとの思い出が熱く(他のページに比して)語られる。中学生のとき風邪をこじらせて横浜の病院に入院、心細くカーテンの隙間から覗き見た、縦に並んだ三つの星。それがオリオンとの出会いだったこと。その星図を書いてくれた友人Kは陸軍中尉として早くに亡くなったが、星とともに忘れられない友人であること。そして「何も知らずに産声を挙げた夜にも、あの雄麗な宝玉の図は屋根の上の空に描かれていた。そして、やがて柩に釘の響く夜の空にも、あれそっくりの天図は燦爛(さんらん)と輝いている。」「三つ星よ、シリウスよ、讃えられてあれ!」と。

随筆にはたくさんの星や星座の名が登場するが、やはりオリオン座は別格のようで、ポリネシアの土人が死ぬ前に、思い思いの星を指さして、「自分が死んだらあの星に住む」と言って息を引き取る、という逸話につづいて、「私が死んだら行く星は、……やはりオリオンときめておこうか?」(1945年60歳)とまで記している。
贔屓(ひいき)の星といえば、天文学者の渡部潤一先生は、家を建てるときにカノープス(りゅうこつ座の一等星)が見える土地を探したとか。そんな家やマンションの探し方もあるのだ。(ところで夜の物件案内ってあるのかな?)

本書のシリーズ名であるSTANDARD BOOKSは、2015年12月に刊行が始まったばかりの「科学と文学、双方を横断する知性を持つ科学者・作家の随筆シリーズ」。野尻抱影のほかに寺田寅彦(科学者)、岡 潔(数学者)、中谷宇吉郎(雪研究の第一人者)など。
平凡社・本体1,400円+税

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