まりも図書館

10月の2冊

「ふくろうくん」 アーノルド ローベル作 三木 卓訳

「居心地よさの発見 家づくりのコトバ200」
郡 裕美 Yumi Kori

2015年10月30日更新

「ふくろうくん」

アーノルド・ローベル作 三木 卓訳

わがキャンパスのゼミ棟の上から、穏やかに学生たちを見守る"ふくろう学長"。「森の哲学者」「森の物知り博士」などと呼ばれ、知恵の象徴とされるふくろうは、絵本の世界でも人気者。ただ今回紹介するのは、そんな森の長老のイメージとは違う、"真面目でいいヤツなんだけどちょっと間抜けたところもある"ふくろうくんの、家を舞台にした5つの物語。

うえと した

「ぼくが びゅうびゅう はしったら
きっと いっぺんに
うえと したに いられるだろ。」
ふくろうは かいだんを かけあがりました。
「ぼく、うえに いるよ。」
と いいました。
ふくろうは かいだんを かけおりました。
「ぼく したに いるよ。」
と いいました・・・・・

どうやら一人暮らしらしきふくろうくん。雪と風の「ふゆくん」を家に招き入れたばっかりに大暴れされたり(『おきゃくさま』)、悲しかったことを思い出しては涙をゆわかしいっぱいに集めてお茶をいれて飲み、しあわせを感じたり(『なみだの おちゃ』)。なかでも司書まり子の1番のお気に入りが『うえと した』。1階にいるときには2階が気になり、2階にいるときには1階が気になって、「ぼくは いつも どっちかを みおとしているんだよ。」と嘆く。そして写真上の方法を試すものの……。
ユーモラスな行動をくすりと笑いながら、最後にふくろうくんがくたくたになって座り込んでしまうのが、20段ある階段のちょうどまんなか10段目、というところで、すっと大人の自分に戻る。

作者のアーノルド・ローベルは1933年ロサンゼルス生まれ。他に『ふたりはいっしょ』『きりぎりすくん』『どうぶつものがたり』など。作家で詩人の三木 卓(みき・たく)の訳文は、子どもへの読み聞かせでなくても声をだして読みたくなる。
秋の夜長、家の暖炉の前で(ない人は、あると想像して!)読みたい1冊。
とりわけ一人暮らしにおすすめ。
文化出版局 こどもの本・854円(税別)

「居心地よさの発見 家づくりのコトバ200」

郡 裕美 Yumi Kori

ときにはmarimo livingにふさわしく、建築についての本や住まい探しの役にたつ本を紹介しなさい、と、ふくろう学長にたしなめられたわけではないけれど……。今回紹介するのは、「五感インテリアゼミナール」や「用と美ゼミナール」の副読本にも推薦したい、"居心地よさとは何か"を考えるのに最適な1冊。住まいをつくるとき、あるいは部屋を借りるとき、間取りや予算や機能性だけでなく、自分が本当に大切にしたいことは何だろうか—————。そのヒントが郡 裕美さんという建築家のなから"水が湧くように生まれ出た(あとがきより)"という200のコトバのなかに散りばめられている。

物語の予感
A window as a "trailer"

玄関に窓を設けると、住まいに奥行きが生まれる。
たとえば踏み石は、先にある空間を示唆する。まるで
映画の予告編を見るときのように、これから展開する
住まいの場面に心を踊らせる。
Stepping-stones suggest continuous space and an
………

例えばこの「物語の予感」は、9つのテーマのなかの
「奥行きをつくる Creating okuyuki」に収められている。普通、一軒の家として紹介されることの多い住宅が、郡さんのコトバでこのように切り取られる。あえてここでは事例写真は隠したが、玄関の地窓からは伊勢砂利に浮かぶ踏み石が見える。入り口からすべては見せないことで、物語へと誘う。なんという日本的な感性、美意識。

かわいく防犯
Cute design promotes security

かわいいのに防犯にもなりそうで、しかもローコスト。
普通はコンクリートのなかに入って見えない
異形鉄筋を使って門扉をデザインした。
また、ポーチ内外を1つの門灯で照らすため壁を
えぐると、入り口がユーモラスな形になった。
It is cute, and safety at a low cost. I designed a door
……

本当は200すべてを紹介したいほど、コトバが端的かつ"コトバ面(づら)"、言い換えれば言葉の肌合いが美しい。著者で建築家の郡さんは、東京・武蔵野でスタジオ宙(みゅう)一級建築士事務所を主宰、アメリカの大学で講師を務めるなどの経歴をもつ方。「空間の奥行きや気配など、日本的な空間の考え方を海外の人にも伝えたいという気持ちが強く、バイリンガルであることにこだわり、自分で英語の文章も書きました。」とあとがきにある通り、すべてに英語が併記されているのも、コトバをより明快にしているのではないだろうか。
最後に誌面の余白の美しさもあげておきたい。
パラパラと、どのページからでも、どの写真からでも、どのコトバからでも。

エクスナレッジムック・1900円+税

ようこそ、マリモリビングオープンキャンパスへ学長メッセージ 開校のごあいさつ