まりも図書館

9月の2冊

「世界の美しい図書館」 PIE BOOKS 編集・制作

「萬葉集 三」 青木生子 井手 至 伊藤 博 清水克彦 橋本四郎 校注

2015年9月30日更新

「世界の美しい図書館」

PIE BOOKS 編集・制作

我が輩は図書館である。蔵書はまだ(4冊しか)ない。などといっぱしの文人を気取りながら、日がなまりも図書館の未来を思い描く私、司書まり子。通った小学校の図書室にはじまり、住んだ町まちの小さな図書館、長じて通った都会の立派な図書館、旅先でみつけた個性的な図書館と、本のある風景が次々に蘇る。そんな追想が、このハンディで楽しい1冊を引き寄せたのか———

大学生が設計した、自由で小さな本の箱
ミニビブ(公園のミニ図書館)
ドイツ/ケルン/2009 ゾーニャ・ジマーマン

卒業生の英知が生んだ、大学と市をつなぐ
シンボルタワー(デルフト工科大学図書館)
オランダ/デルフト/1997 メカノー

収められているのは、ユネスコ世界遺産に登録されている重厚で神聖な図書館、地域の象徴となっている佇まいの美しい図書館、知の拠点となるべく情熱と先進性を秘めた大学図書館など100館。いずれも2、3点ほどの写真と200字あまりの短い文の中で、その成り立ちから建築の特徴、閲覧室や蔵書について簡潔に紹介されている。 表紙に採用され、「見る者を夢見心地へ誘う」と解説されている、オーストリア・リンツ郊外のサンクト・フロリアン修道院図書館を皮切りに、イタリア、ハンガリー、チェコ、スイス……インド、中国、日本……アメリカ、メキシコ、コロンビア、ブラジル。28か国を旅するように図書館が紹介されているのも楽しい。

巻末には古代から20世紀までの図書館の歴史解説が付いている。建築好きにも、旅好きにも、もちろん本好きにもおすすめの1冊。同じ世界の建築シリーズに『世界の名建築』『世界の夢の集合住宅』がある。
パイ インターナショナル・1800円+税

新潮日本古典集成<新装版>

「萬葉集 三」

青木生子 井手 至 伊藤 博 清水克彦 橋本四郎 校注

今月の五感インテリアゼミ・「温故知新」の虫の音を試聴しながら、いにしえの人に心を重ね合わせる。虫の音以外になにもない、清澄な世界。西の空には今宵のように傾きかけた三日月がかかっていただろうか……。なんて想像しているうちに、俳人や歌人でなくても風雅な気分になるから不思議なもの。
こんなときにはパソコンを閉じて、古典をひも解きたい。こおろぎの歌が出てくるという万葉集は、言わずと知れた現存する日本最古の歌集。二十巻、4516首が収められている。すべての歌を掲載している全集の中から、今年<新装版>が発行された新潮日本古典集成の『萬葉集 三』を手に取ってみよう。

巻十 秋雑歌
蟋(こほろぎ)を詠む
2160 庭草に 村雨降りて こほろぎの
    鳴く声聞けば 秋づきにけり

村雨と争って鳴くこおろぎに、秋らしさを 感じている。<村雨>にわか雨。この語は 萬葉集中この歌にしか見えない。

まず、この四六版という小さめのサイズがいい。一般的な菊判は、机に置いて読む。この四六版は片手で支え片手でめくりながら読む、という感覚の違いか。下の段に読み下し文、上の段に現代語訳と注釈があるけれど、大人になってからの古典の読書は、少々意味がわからなくても、学生の頃より豊かになった想像力で、わからないところは自分流に補いつつ読むのも一興。

例えば、この『萬葉集 三』 巻十の<秋相聞>にある、もう一首のこおろぎの歌。

こほろぎの 待ち喜ぶる 秋の夜を
   寝る験(しるし)なし 枕と我れは

共寝の相手はいないのか、はたまた待てどもやって来ないのか……。

新潮社・2900円(税別)

ようこそ、マリモリビングオープンキャンパスへ学長メッセージ 開校のごあいさつ