まりも図書館

8月の2冊

「海のうえに暮らす」 関野 吉晴

「しぐさの日本文化」 多田 道太郎

2015年8月31日更新

地球ものがたり

「海のうえに暮らす」

関野 吉晴

8月のある深夜、暑さも眠気も吹き飛ぶほど引き込まれた「SWITCHインタビュー 達人達 山極壽一×関野吉晴」の再放送(Eテレ)。ゴリラ研究の第一人者である山極京大総長を相手に、医師で探検家の関野氏はアフリカに誕生した人類が拡散していった足あとをたどる「グレートジャーニー」の体験をベースに、家族、戦争、教育をテーマに語り合う。
関野が山極に質問。「極北の地で人が住めるようになったのは、何を発見したからだと思いますか?」 答えは最後にして、司書まり子からの8月の1冊目は、その関野氏の“地球ものがたり”4巻から『海のうえに暮らす』。

一週間に1度、家船(えぶね)で
マングローブのほとりに
やってきます。

そこでココヤシの枯れ葉に火をつけ、その火で、船の底を焼きます。
船底についた虫や貝、
海草を焼きはらうためです。

これは、バジョという南の海の漂海民のものがたり。おなかがすいたら、船から釣り糸をたらし、海にもぐってモリで魚をつき、潮が引けばシャコガイやウニをとる。住みかでもある家船(えぶね)で、食事や料理はもちろん、トイレも、眠るのも、子どもを出産するのも。争いがきらい、武器を持つのもきらいで、かつて地域に戦争や反乱が起きるとさっさと別の地に移動し、そこで平和な国の王に助けを求めたという。いまでは各国の定住策もあり、ほとんどの人が海の上に家を建てて住んでいるけれど、家族の持ち物は船1そう分。それで満ち足りて生きている。

さて、関野氏のゴリラ総長への質問の答え。それは、針と糸。毛皮を縫うことによって、マイナス40度になる土地でも住めるようになったそうです。
ほるぷ出版・1800円+税

「しぐさの日本文化」

多田 道太郎

「用と美」ゼミナールはら助手の飯田水引の取材文を読みながら、「結ぶ」という言葉について、つらつら思いを巡らせていたところ、本棚の奥の奥のほうから呼ばれている気が。それこそ引越しの際に紐で結んだままになっていた古い本の束をほどくと———。表紙カバーもなくなり日焼けした1冊の本『しぐさの日本文化』。奥付によると1972年7月15日 初版第1刷発行とある。英語でいうゼスチャーを身振りとするなら、しぐさは、抑制され、洗練されたゼスチャーといえるのではないか、という考察のもと、「あいづち」「はにかみ」「いけばな」「しゃがむ」「なじむ」といった、しぐさのなかに見られる日本文化の特徴が論じられている。その最後が「むすぶ」。

以上、私は、私の雑多な印象をまとめ、まとめることで「むすび」としたわけだが、このようにして「むすぶ」こと自体、日本文化の特徴をあらわにしているという気がしないこともない。紐と紐とをむすび、米粒をむすび、手と手をむすび、————このようにして、私たちは「つながり」の世界をかいま見、確かめ、そして安心の境地へといたるのである。

と書くと、小難しい本のように思えるかもしれないけれど、著者の多田道太郎先生は、「低さ」———身近なもの、小さなもの、卑しいとされてきたもの———をテーマにしてきた学者さんというだけあって、“上から目線”でない評論がうれしい。40年前に書かれた文化論(初出は日本経済新聞に1970年10月から71年12月にかけて連載されたエッセイ)とはいえ、急速に“しぐさ”が失われていく現代、再読したい1冊。住まいの空間としぐさにも深い関係があるようにも感じた。2014年に文庫化。

多田道太郎(ただ みちたろう)1924(大正13)年京都生まれ。
フランス文学者、評論家。京都大学名誉教授。2007年没

講談社学術文庫・994円(初版は筑摩書房から1972年に発行)

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