ゼミナール

「五感インテリア」ゼミナール

温故知新のインテリア ⑤

カラーセラピー今昔

2016年10月3日更新

四季の情景が豊かな日本では
独特の伝統色が多彩に生まれました。
昔の人はどんな風に色を感じ、
暮らしに取り入れていたのでしょう?
自然と調和する古来の感性を、
現代のインテリアにも活かしてみませんか?

外国人がとまどう日本語の色の名前

外国語を習い始める時、色の名前はいくつ覚えるでしょうか?

白・黒・赤・青・緑・黄は基本ですね。それにプラスして、オレンジ・ピンク・紫・茶ぐらいでしょうか。このぐらい覚えておくと、日常生活でまず困ることはありません。あとは、情景に合わせて「スカイブルー」と「コバルトブルー」を使い分けたりなど、使い手の個性で表現の幅をもたせることができます。

ところが、外国の方が日本語の色を覚える場合、少しめんどうなことが起こります。

たとえば、「赤い靴」とは言えるのに、「黄い靴」とは言えないので、「黄色い靴」というふうに「色」をつけます。さらに「緑」などは「緑い靴」とも「緑色い靴」とも言えないので、「緑色の靴」というふうに「色名+の」という形に変化させなければなりません。

これって、日本人は一体どうやって使い分けてるの? と驚かれるところです。

結論を先に言ってしまうと、「い」を直接つけて形容詞がつくれるのは「赤い・青い・白い・黒い」の4色のみ。それ以外はすべて「オレンジ色の」「紫色の」というように、色名は名詞となります。(2つだけ例外があって「黄色い」「茶色い」だけは「色」をつければ形容詞がつくれます)

でも「なぜそうなるの?」と聞かれると、日本人でも答につまってしまいます。

古代、日本には色が4つしかなかった !?

このカラクリは、中国から入ってきた陰陽五行説に基づいているようです。

五行では、四季や方角、時刻や季節に、それぞれ色を対応させていました。

「青」は、春の霞がかった淡い光の情景。草木萌えいずる青春を表します。

「赤」は、夏や昼間の強い陽射しで明るいさま、人生もまさに真っ盛りの年代です。

「白」の「しるし」というのは「あわし」の逆で、はっきりしたさま。秋や夕方の澄んだ空気を表すのでしょうか。人生も落ち着いた壮年期です。

「黒」は、陽射しの少ない冬や、太陽の出ていない暗い夜。漢字では「玄」とも書き、「玄冬」や「玄人」という言葉にも通じます。人生は老年期です。

実際は緑色なのに「青葉」「青信号」といったり、太陽(日)を象徴的に赤で表現したりするのは、その名残でしょうか(西洋では太陽は黄色で描きます)。

この4色は、色味だけではなく、たとえば「あの人はまだ青いね」とか「赤っ恥をかく」「汚れなき白い心」「腹黒い男」というふうに、人物や精神を形容する言葉としても幅広く使われますが、それはこんな背景があったからなんですね。色にこめられた、日本語のルーツの奥深さを感じます。

(追記:5行のもうひとつ、「土」は「黄色」ですが、位置は「中央」で、季節は「土用」という、少しイレギュラーな存在です)

四季折々の自然に美を見出す感性

さて、古代の基本4色とは別に、「色味」そのものはといえば、日本の伝統色はまさに百花繚乱です。デザイナーが使う「日本の伝統色」という色見本帳には実に300色もの種類があります。「韓紅花(からくれない)」「萌黄色(もえぎいろ)」「浅葱色(あさぎいろ)」など色名も美しく、四季折々の豊かな自然の中で、微妙な色彩の違いを繊細に感じとっていた感性が伝わってきます。

新緑や紅葉はもちろん、枯れ落ち、朽ち果て、やがて土に還る儚い存在にも目を向け、枯葉にも「朽葉(くちば)色」「赤朽葉」「青朽葉」「黄朽葉」というふうに多彩な色名がありました。鮮やかな色も、朽ち果てる色も、どちらも自然のいのち。自然をありのままに受けとめ、愛し、敬意を払っていた美意識を感じます。

暮らしの中では、それぞれの季節を楽しみながら、着物や調度品に自然の色を取り入れていました。
「襲色目(かさねいろめ)」という着物の配色では、同系色を組み合わせたり、逆に反対色を挿し色に使ったりして、春夏秋冬の情景を表現していたのです。自然と調和しながら個性を引き出すのは、昔ながらの知恵であり、最先端の優雅なおしゃれだったのでしょう。

この豊かな色彩感覚を、現代のインテリアにも活かすことはできないでしょうか?

忙しい毎日。ちょっと疲れてしまった時。あなたはどんな情景を思い浮かべると心が落ち着きますか?

森の木漏れ日、潮騒が聞こえる海辺、紅葉の野山・・・。人によってさまざまですが、それは自分だけの「パワースポット」。その心地よいイメージを、お部屋の中にちょっとだけ再現してみるのです。

たとえば、森の奥の湖畔でくつろいでいるイメージなら、いつも座るスペースに萌黄、若竹、常磐(ときわ)色のように、微妙に異なる緑系のラグマットやクッションを重ね使いしてみたり。テーブルの上には水の波紋をイメージして、青磁、緑青、群青などの透明な小瓶を並べてみたり。夜になると、湖に映る月のようなオレンジ色のランプを灯しても素敵ですね。

都会の真ん中でも、マンションでも、自然とともに暮らし、自然を味わう感性を磨くことはできそうです。古代からのカラーセラピーは無限です。あなたの五感とアイデアで、あなたらしい空間を表現してみてください。

Column
古くて新しい「紫」のお話

紫は古来、貴重な色で、高貴さ・優美さの象徴でもありました。染料が稀少だったため、冠位十二階では最上位の人にだけ許された「禁色」でした。『源氏物語』は作者自身が「紫式部」で、重要な人物は(紫の上はもちろん藤壺や桐壺帝も)紫を表す名前です。鎌倉時代には、武士が鎧に紫を使うようになり、合戦上ではひときわ目を引きました。江戸時代には歌舞伎役者の衣装から「江戸紫」(青みがかった紫)が大流行。いつの時代も、紫は特別な色だったのですね。現代、東京の下町にあるスカイツリーも、夜のライトアップで江戸紫を表現しています。

江戸紫

イラスト:平澤朋子 Tomoko Hirasawa

1982年、東京生まれ。武蔵野美術大学卒業後、フリーのイラストレーターとして児童書の挿絵や装画、雑誌、広告など様々な媒体で活動している。挿絵・装画を手がけた主な児童書に、『緑の模様画』『ニルスが出会った物語/全6巻』(以上福音館書店)、『青矢号』(岩波少年文庫)、『世界の果ての魔女学校』『あしながおじさん』(以上講談社)、『わたしちゃん』(小峰書店)、『親子あそびのえほん』(あすなろ書房)などがある。

●ウェブサイト http://studio-dessin.com/

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