ゼミナール

「五感インテリア」ゼミナール

温故知新のインテリア ①

空間を満たす「音の風景」

2015年9月30日更新

住まいを自分らしく、
くつろぎの空間にするために
目で見えるインテリアだけではなく、
季節ごとの音に耳を澄ませて
「音のインテリア」も楽しんでみませんか?
日本人が時をかけて受け継いできた
古き良き時代の知恵の中に
現代にも活かせるヒントがありそうです。

ラフカディオ・ハーンが驚いた日本人の感性

「耳なし芳一」や「むじな」などを世に広めたラフカディオ・ハーンは、1890年(明治23年)日本にやってきた時、何よりも庶民の生活に心ひかれます。無数のランプや提灯に照らされた秋の縁日をそぞろ歩きながら、ふと足をとめたのは、小さな木の籠がズラリと並んだ屋台。そこから洪水のようにあふれ出る虫の声。ハーンは、日本人が虫の声を鑑賞する風習に驚き、これをほかの外国人に理解させるのは骨が折れる、と語っています。

さらに、日本人のもつ独特な感性について、
「心地良いながらも胸苦しい秋の美、夜の声の不可思議な甘さ、
森や畑のおかげで不思議と記憶がすぐよみがえってくること、
こういったことは、西洋では類(たぐい)まれな詩人だけが
見抜いているにすぎない。なのに日本では庶民みながわかっている」

と称賛しています。

ラフカディオ・ハーン(1850~1904年)
ギリシャ生まれのイギリス人。アメリカの出版社の通信員として来日後、
英語・英文学の教師となり、旧松江藩士の娘、小泉節子(セツ)と結婚。
日本に帰化し、小泉八雲と名乗る。日本文化を広く世界に知らせた。

秋の虫に思いを託した和歌

秋の虫をただの音や鳴き声ではなく、それをとりまく季節や情景と結びつけ、自分の思いを託す「心の風景」として和歌に詠む風習は、奈良時代までさかのぼります。

ちなみに、万葉の時代の「こおろぎ」は、鳴く虫の総称として詠まれていたようです。平安時代になると、代わって「鈴虫」「松虫」や「きりぎりす」が登場します。どちらかというと、ものがなしい、憂愁を帯びた歌が多いですね。古語の「かなし」は「悲し」「哀し」「愛し」の字を当てることもありますが、いずれも心に染みいるような深い情感を表現しています。うれしさや喜びだけではなく、さびしさや悲しさ、切なさなど、多彩な心情を移ろいゆく四季のように味わう、日本人の感性が現れているようです。

「借景」ならぬ「借音」で空間を満たす

縁日で虫を売る「虫売り」の風習は、現代では廃れてしまいましたが、形を変えて楽しむ方法があります。今、お住まいの場所で窓を開けると、虫の声や木立の葉ずれが聞こえますか? TVを消して、窓辺に椅子を置くだけで、「虫の演奏家」たちの奏でる、小さなコンサートホールのできあがりです。

「車の音や騒音しか聞こえない」という方も大丈夫。『虫の声』や『日本の自然音』『清流の音』などを集めたCDもありますし、パソコンやスマホがあれば、you tubeで検索して自然の音を流しっぱなしにすることもできます。より自然に近づくために、ちょっぴりデジタルの力を借りて、わが家の「音空間」をデザインしてみるのです。

お部屋の模様がえは大変だけど、「音の風景」をつくるのは、ほんの一瞬!  眠る前や、忙しい合間の10分でも、自分の好きな音で空間を満たして、秋の夜長、しばし心を遊ばせてみませんか? たとえそこがどんな場所でも、わたしたちはハーンいわく「虫の声一つあれば優美で繊細な空想を次々に呼び起こすことができる国民」なのですから。

◆引用出典:「日本の心」小泉八雲著(講談社学術文庫)

Column

助手なかむらの近所で拾った虫の声

①夜の森のにぎやか演奏会 ②草むらの静かな二重奏

  • 虫の声(演奏会)を聴く

  • 虫の声(二重奏)を聴く

イラスト:平澤朋子 Tomoko Hirasawa

1982年、東京生まれ。武蔵野美術大学卒業後、フリーのイラストレーターとして児童書の挿絵や装画、雑誌、広告など様々な媒体で活動している。挿絵・装画を手がけた主な児童書に、『緑の模様画』『ニルスが出会った物語/全6巻』(以上福音館書店)、『青矢号』(岩波少年文庫)、『世界の果ての魔女学校』『あしながおじさん』(以上講談社)、『わたしちゃん』(小峰書店)、『親子あそびのえほん』(あすなろ書房)などがある。

●ウェブサイト http://studio-dessin.com/

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